路線バスで行く東京（一）

　職場の目の前から、新宿までバスが出ている。
　そのことを同僚に聞いて乗ってみたのは、今年の春だったろうか。それ以来、バスに乗って新宿に出るということが、一種の気分転換になった。
　バスは、電車よりもゆったりしているし、普段地下鉄を使って通勤しているから、車窓が見えるというのが新鮮だった。職場の前から新宿行きのバスに乗るようになって、バスの良さを見直した私は、機会を見つけてはバスに乗るようになった。
　一月某日日曜、思い立ってバスの旅に出ることにした。もちろん路線バスである。行き先はあらかじめ決めな方がいいだろう。
　私の家から歩いて五分強のところから、新宿行のバスが出ている。関東バスである。
　新宿に行くなら、最寄駅から一本なのだが、新宿が目的地なわけではない。新宿に出て、西口のバスターミナルで次の行き先を探すつもりなのである。

　駒沢陸橋行きのバス停があって、出発まで少しだったから並んだ。私は、駒沢というところに行ったことがない。こういう機会でないと行くこともないだろうから、行きたい。ところが、実はそのバスは駒沢陸橋まで行かず、途中で止まるのだと知って、やめた。

　ターミナルの乗り場をいろいろ見て回ったが、行きたいところが見つからない。中野とか高円寺に行っても仕方がないので、とりあえず渋谷に出ることにした。
　京王バスだったかな。明治神宮の裏、というか参宮橋の方を通り、ＮＨＫや渋谷区役所をかすめて渋谷駅に至ルートである。新宿から渋谷であれば、電車を使ってしまうのが常だが、バスに乗ると見慣れない景色に出会うことが出来て、新鮮である。


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